精神的遊牧民

北海道の海辺に輝く朝焼けのように清らかなブログ

完全自殺マニュアルを通して現代社会を考える

現代の若者は情報リッチ
 
最近、久し振りにGhettoに設置している、いのちのチャットに出没してみて、ある方とお話しする機会があったのですけど、主に若者や四十代半ばまでの年齢層の方は、全体的に見ると情報リッチですよね。スマホタブレットのおかげでリテラシー能力が高いですし。
 
最近は、年配の人も困った時はすぐに必要な人や情報にアクセス出来る状態にありますけど、そういう意味では良い時代になってきたかと思います。
 
 
 
いのちのチャットに参加した時に、僕は完全自殺マニュアルという本について言及していました。完全自殺マニュアルという本は、バブルが弾けた後の1993年7月7日に、生き難さを感じていた青年が太田出版から出版した本です。
 
精神的遊牧民の読者の中には、読まれた方もいらっしゃると思いますけど、完全自殺マニュアルは、ありがちな自殺者のルポや自殺に関する理屈や一般的な精神論を並べたものではなく、ありとあらゆる自殺方法が具体的に細かくこまかく書かれています。そういった意味でもラディカルな一冊です。
 

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著者である鶴見済さんは、決して安易に自殺することを推奨しているのではなく、読者が生き難さを感じた時に“もしもの時の手段”を知ることで、どうにか生きていけるようになることを意図されていた筈ですし、完全自殺マニュアルにはネガティブなイメージがあるものの、定期的に大バッシングされるといったことはなかったそうです。
 
 
しかし、出版されてしばらくしてから不健全だと騒がれたりして、有害指定する県が出てきたそうです。
 
 
有害指定されたのは、青木ヶ原樹海で発見された自死したと考えられる死体の周辺からこの本が発見されたり、青少年の自殺を誘因しかねないといった行政側の主張によってです。
 
しかし、実際には完全自殺マニュアルが出版された時期の自殺者の数は少なかったそうです。
 
 
岩波や金曜日や筑摩から出ている行政側からするとあれな本と比べても、太田出版彩図社データハウスや第三書館から出ている不道徳と解釈される傾向のあるサブカル本は多少問題視され易いのかもしれません。
 
しかし、自殺のマニュアル本=有害という図式と解釈は、ロジックとしてはとても解り易いですけれど、疑問を感じざるを得ません。自殺の情報を扱うことが悪いということが強調され過ぎる社会にもです。
 
そもそも、非難し易い面のある対象の情報を偏向させる為、ネガティブなレッテルを貼るというのは、典型的なプロパガンダの手法であることが多いですし、矢張り、完全自殺マニュアルを持参して樹海で自殺される方の場合は、他のことがきっかけになって自殺する可能性があります。
 
ですから、完全自殺マニュアルの安易な規制については行政の在り方を考えさせられる契機となりました。
 
その辺りの話や鶴見済さんの活動については、いのちの駅にも登録してあるはぐれ猫さんが運営されていているワタル・ムーヴメント完全解説(http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watarumovement/top.htm)というサイトでも扱われています。興味のある方はぜひ寄ってみてください。
 
ちなみに、僕自身は、完全自殺マニュアルを手にして樹海の彼方に吸い込まれていった人達とは、人種的に多少かぶっていたところがあります。鶴見済さんの読者であり、同じ文脈を共有し、実際に鬱蒼とした樹海や自殺名所を彷徨い歩いてきたという経験からもですけど。

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鶴見済さんは、1994年2月26日にも太田出版からぼくたちの完全自殺マニュアルという本も出されてます。こちらは、完全自殺マニュアルの騒動記、読者からの手紙、完全自殺マニュアルについての様々な意見が読み易くまとめられています。
 
ちなみに、こちらの本の72ページには、東京の14歳の男子学生だという少年(手元にある第6版では何故か東京都県という表記になっていた)が太田出版に投書した『よく「自殺してやる!」とかいう奴がいるけれども、そういうやつにはこの本を読ませてやるといいだろう』という意見が紹介されています。
 
後、ドクターキリコ事件の起きた安楽死狂会の管理人をされていた美智子交合さんが、著書わたしが死んでもいい理由の中でも告白されていましたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんけど、彼女が太田出版に投書した意見も紹介されています。長いので割愛いたしますが、東京都のOLとして178〜181ページに掲載されています。
 

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生き難さを感じている方に推薦したい鶴見済さんの本
 
鶴見済さんを擁護する為に理論武装しているのではなく、これはただの所感に過ぎませんけど、鶴見さんの本に出会ったことで、生き難い世の中を生きていく為の手がかりになった人も多いんじゃないかな、僕も含めてですけど。
 
ですから、僕は、成人である程度の教養と自制心があって生き難さを感じている方には、完全自殺マニュアルやレイヴ力(こちらは共著)をお勧めすること(特に後者が多い)があります。
 

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完全自殺マニュアルが出版された時代と現代
完全自殺マニュアルが出版されたのは、バブルが弾けた後ですけど、あの頃はさほど環境に恵まれていない場合でも少し努力をすれば、そこそこの会社に正規雇用で入れて、結婚出来て、ある程度安定した立場を手に入れることが、まだ可能な時代だったんですよね。
 
完全自殺マニュアルが出た時代は、安定した立場を手に入れることが比較的やさしい時代ではありましたけど、現代の方が情報に恵まれているという意味では、世界は徐々に良くなってきているのではないでしょうか。
 
特に、経済苦や健康問題には適切な情報が行き渡り易い時代になりました。目には見えない病気で、意外に多くの人に当てはまっている、ADHDアスペルガーといった発達障害や依存症や気分障害といった病気が、脳機能の病気として認知されてきたことで、そういった問題を抱えている方にも生き易い時代になってきました。
 
 
もしもの時の手段
 
個人的な生き難さが緩和されてきたのは、信頼出来る友人や知人達の存在と鶴見さんの本に出会ったこと以外では、ネットの影響が大きいですけど、ネットも現代版の“もしもの時の手段”なんですよね。
 
ちなみに、鶴見済さんは完全自殺マニュアルの文脈に於いて“もしもの時の手段”をエンジェルダストに言い換えていたと解釈出来ます。
 
何れにしろ、安定した立場を手に入れることが難しくなりながらも、情報に恵まれている現代社会を生きる我々は生き難さを感じた時、安全地帯に自分を繋ぎとめてくれる“もしもの時の手段”を求めずにはいられません。

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