精神的遊牧民

北海道の海辺に輝く朝焼けのように清らかなブログ

音楽『ロマンティーク96』

ロマンティーク96とは、84年に日本で結成し01年に解散した、ピチカート・ファイブの5枚目のアルバムです。

結成時から中心メンバーだった小西康陽と90年に加入した三代目のボーカル野宮真貴の二人で活動する頃から、公共性の高い仕事を請けたり海外活動を増やすなどの実績を重ね一般社会にも認められていくようになります。あのミック・ジャガーもピチカート・ファイブのファンであることを公言していました。

このアルバムを簡潔に形容するならば軽快で陽気。しかしその陽気さの裏に潜む繊細さには聴く者の心を揺さぶるだけのスピリットがそなわっています。

他にも注目すべき点は、ボーカルの歌唱力にあります。翌年発表されたアルバム『宇宙組曲』に収録されている曲は、本作の曲をプロのアーティストたちがリミックスしているので、こちらもお薦めです。そうした事情をご存知の方は、ロマンティーク96の方でもまず曲が優れていることに興味がいってしまいがちかもしれません。しかしボーカルの技術は高く四つ打ちからストリングスまで対応しています。

ピチカート・ファイブ作品を長年聴いている人の間では『TYO』や『R.I.P』の評価が高いようですが、どれか一枚お薦めを選ぶように言われたら私は本作をお薦めします。

ちなみに二番目にお薦めのアルバムは『グレイト・ホワイト・ワンダー』で、こちらにはロマンティーク96に入っている曲も、別の音源ですこし含まれています。

意識せずにさっと聴いていると、曲によってはすこし遊びの利いたポップな音楽のようにも聴こえるかもしれませんが、耳を澄ますと単調なメロディーラインと陽気なボーカルの底には、穏やかな望みと同時に儚さのようなものが感じられます。

それから歌詞はシンプルにも感じられかもしれませんが、言葉には複雑な意味があります。ですから歌詞を文章として読むと意外に難解な意味の曲も含まれています。

曲のなかには音源にやや難があるものもありますが、優れているのは20秒にも満たない11曲目、それから12曲目。というか、その11から12へのスライドは必聴です。奇妙でありながら、何故か清らな美しさがあります。19曲目の『東京は夜の七時』もポップでありながら繊細で『あいたい』『あいしている』といったフレーズはありふれてはいますが、悩ましい心情が伝わってくる音楽です。

このグループの音楽はリピートしていると、次第に曲の良さが解ってきますが、本作では5曲目『ハッピー・バースデイ』と15曲目『スペルバウンド』がとくにそうです。興味のある方はこちらもどうぞ。

なんだか『ロマンティーク96』というより『グレイト・ホワイト・ワンダー』を中心に、ピチカート・ファイブの特集みたいになってしまいましたね。

このグループの音楽は、誰かと共感するというよりも、独りでそっと聴いていたいタイプの音楽ですし、普段の私はこうしたことはあまり言わないのですが、今回はとくにあのことを本気で考えざるをえなくなっている人たちに聴いてほしいと思いました。

ちなみに邦楽の紹介は今回が初めてです(これはどうでもいいことかもしれませんが)。真剣な〇〇〇望者にとってもそうでない方にとっても良盤(だと思います)。95年(と96年)作品。